職人資格って必要?

マイスター

先日の記事で、

「職人資格やマイスター資格がなくても有能であれば工房長や経営者にもなれる」

ということを書きました。

では、資格を持つメリット/無資格であることのデメリットは何か?

それは、その時例に出した有能な無資格者の同僚が

『マイスター取る!』

と言い出したことにも大きく関係します。

資格がないことのデメリット

給与が低いところからスタート

交渉次第&実力次第ですが、低くされる傾向にあります。

選択肢が少ない

基本工房や工場で、業務範囲が狭くなります。

近年は特にコストを抑えるために、

作業の効率化が進み、

結果作業を細分化して、

一人の人間がずっと同じ作業を大量にする、

といったスタイルが主流になってきています。

小さな会社だと、一人の人間が一連の作業を全部一人でこなすことが多いのですが、

小規模な家族経営の会社はどんどん少なくなってきているのが現状です。

職人資格を持っていないと、

専門理論の必要ない作業に回されがち。

一日中延々と単純作業を繰り返すのは、人によっては苦痛かも。

そして、入社した時からずっと同じ仕事しかしないことは、

転職時に不利になることもあるでしょう。

資格があることのメリット

業務の選択肢が増える

職業訓練を経ると当然下働き〜試験課題まで、

お店によって比重は異なっても、

整形靴職人として、求められる作業は一通り経験することができます。

近年の試験では、接客も課題の一つです。

なので、職人試験合格後に工房か店舗か工場か、何がしたいのかを自分で選びやすくなりますし、

マイスターやその他の資格取得の可能性も広がります。

履歴書に学歴として書ける

職人資格はある程度の技術と専門知識を持っているという証明になると同時に、

ドイツでは「学歴」となります。

これが意外と重要視されるのは、

ドイツが学歴重視社会なのと、

職業訓練制度が、教育法とも絡んでいて、

日本の中学校にあたる学校を卒業して職業訓練を始めた子や、

高校を中退して職業訓練を始めた子にとって、

職人試験に合格することは

高校卒業」に値する資格を得ることになります。

ただ、職人試験に合格しても、大学に進学できるわけではありません。
それはマイスターを取得すると可能になりますが、進学できる学科は限られます。

国外でも働ける

ドイツの職人資格は国家資格で、EU圏内でも有効です。

国を変える、という選択肢も生まれます。

その他

外国人にとっては語学やドイツの一般常識がある、という証明にもなり、
(職業学校の授業では政治経済の授業も必須)

私の場合は、ビザを取得するのに有利に働きました。

マイスター資格取得の道のり

職人試験(専門理論+専門実技)に合格すること。

5年以上整形靴の会社で働いていたという、職務経歴証を出せば、職業学校にいく必要はありません。

マイスター試験に合格

マイスター試験を受けるためにマイスター学校に行かなければならない訳ではありませんが、

専門理論と実技の試験は、普段の業務ではやらない

  • アッパー制作
  • 内底靴
  • 石膏で被験者の足のポジティブの型を作成
  • フットケア(器具を使用)
  • 整形靴の原価計算

などが試験課題なので、学校に通わなければ合格は難しいでしょう。
(専門理論と実技の詳しい学習内容や期間については『整形靴マイスター学校で習うこと』を参照してください。)

他にも

  • 経営学・簿記
  • 職業教育

の試験に合格しなければなりません。

これらも、それぞれ準備コースが各都市にあるので、受講して受験するという流れです。

期間は様々ですが、全日制のコースで4週間ほどかかります。

すべて合格するまでには、なかなか時間と労力とお金がかかります。

無資格・整形靴職人歴20年で、今、マイスターを目指すわけ

理由:同じ作業にうんざり

整形靴の工房での制作は主に3つに分けられます。

  • 半既成インソール制作
  • 既成靴の加工・靴や革製品、その他の修理
  • 整形靴・フルオーダーインソール制作

私の働く会社ではここ3年程で、急激に半既成インソールの制作割合が上がりました。

そこで、早く・正確に仕事ができる彼は半既成インソールの「仕上げ削り」担当に抜擢されました。

この仕事は、8時間ずっと機械の前に座ってひたすらインソールを削るというもの。。。

最初はその単調な作業を利用して、いろいろなオーディオブックを聴きながら仕事してましたが、

さすがに

ヿ(-へ-)あきた。何か違うことがしたい。

それでも担当を変えるのが難しく。。。

他のことができるのは、病欠が出た時だけ。

転職するのもリスクだし。

この会社が嫌なわけでもない。

でも、定年までずっとインソールを削り続けるのは嫌だ。

なにより、

マイスター試験の半年前からやっと工房にこれた二人の同僚のマイスター学校生が、

あーでもない、こーでもない、と言いながらワイワイ課題に取り組んでいる姿が楽しそう!

他にも理由があるかもしれませんが、

私がわかる範囲ではこんなところ。

現状を変えるには資格取得が一番!

というのが彼の考えた末の結論だったのでしょう。

はてさて、どうなるか・・・?!

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