ドイツでは手工業に限らず、多くの職業分野でこの「デュアルシステム」というものが採用されており、理論は学校、技術・実地は会社・工房で学びます。
手順としてはまず就職先を見つけ、職業訓練契約書を交わし、それから会社が(私は整形靴職人なので)手工業組合に申請を出し、職業学校から招待状が届くと晴れて入学が可能になります。
ドイツの学生たち(殆どが高校生)はまず、なりたい職業を決め、学校に行っている間にインターンを数日〜数週間体験し(インターンの期間は学校が設けている場合が多いです)、会社に履歴書を出し、面接をして会社を決めるーいわゆる普通の就職活動を行います。
職業訓練自体が、大学に行かない青少年のための制度的な側面があり、早い人で15歳から職業訓練を始めることができます。(特例で14歳も認められていたはずですが、稀です。)
なので職業学校では専門科目の他に体育や数学、国語、社会経済、宗教の授業があります。
上にも書いた通り、学生の殆どが17才前後〜二十歳前半です。
(20代後半で二十歳前後の子たちと体育の授業はなかなかきつい貴重な体験でした)
たまに他の職業を何らかの事情で辞めてくきた30−40代の人もいますが、彼らは既にそれらの単位は取得しているので、専門科目以外は免除になります。
日本人は大学を卒業していても免除にはなりません。。。宗教は「宗教が違うから」という理由で免除することも可能ですが、学校や先生の考えによって変わります。
学校で学ぶ内容はそんなに難しくはありません。
特に数学は簡単すぎてびっくりしました。小学校高学年から中学校前半レベルです。
他の授業はやはりドイツ語がネック。
特に国語としてのドイツ語は語学学校で学ぶ外国語としてのドイツ語とは全然違うのでさっぱり分かりませんでした。
政治経済は日本と制度や法律が似ているので、単語さえ地道に拾っていけば難しいことはありません。
あとは専門科目。これもコツコツ単語を覚えてあとは暗記でいけます。
専門科目と政治経済は職人試験の筆記で点数を取らなければ合格できませんが、他は真面目に授業に出ていれば卒業はさせてくれます。数学の成績が悪くて留年したとかは聞いたことがありませんので。
学校に行く頻度は週1程度。
学校の他には私の住んでいるノルトライン・ヴェストファーレン州では3年半の職業訓練期間に四回(私の時代は二回だった)の合同職業訓練がハノーファーにある整形靴技術連邦専門学学校で行われます。特に前半のが重要で、この出席証明書がないと中間試験が受けられません。
期間は一回1週間。30人くらいの職業訓練生が集められ、理論や実技を習います。
これは職業訓練生の技術習熟度をある程度同じにする目的があります。
同じ整形靴の会社であっても、それぞれの会社によって得意分野が違い、普段工房で行う作業が全然違うからです。人によっては始めてする作業もあるでしょう。やり方の違いや間違った解釈で教えられていないかコントロールする場でもあります。
一応成績的な評価も付きますが、本番のテストや職業学校の成績に反映されることはありません。会社に対しての出席証明書みたいなものでしょうか。。。
整形靴職人の職業訓練は基本3年半ですが、大学入学証明書(英語)と会社の同意があれば3年に短縮することが可能です。
こうして3年ないし、3年半の職業訓練を経て、最終の職人試験に合格すれば晴れて「職人」となります。
「マイスター」はその上の資格になります。
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