靴を履く人にとっては、どーーでもいい話何ですが、靴職人の中では意見が分かれるものの一つ:
踵芯は銀面を表(外)にするか、足側に向けるか。
革の銀面とは、皮の表皮+乳頭層(毛の生えていた側)にあたる部分で、ツルツルで滑らかな面。
その逆が床面で、網状層側のざらざらした面を指します。
日本では床革といって、革の銀面を除いた革を踵芯や先芯に使われることが多いようですが、ドイツ整形靴では銀面がついた牛の首-肩の革で、厚さ2,5〜2,9mmや3〜3,4mmをお客さんの症状や体重に合わせて使い、重心の傾きによっては更に補強材を貼ったりするのが一般的です。
(ドイツ語では床面を”Fleischseite”=肉側、銀面を”Narbenseite”=傷側と呼びます。)
ツルツルした面とザラザラした面、質感が違えば、同じ革でも特性があり、加工時の感触も違います。
私の場合は、最初に習った工房では銀面が足側と教えられ、今の会社では銀面を外側にという逆の方針で、靴の仕上がりや修理で帰ってきた靴を見る限り、どちらが良い・悪いではなく、『好み』という一言に尽きるのではないかと思うのですが(笑)、FaceBook の Footwear Makers Forum というところにも同じ疑問が投稿されていて、いろいろな意見が出ていたので、私の見聞きしてきたことと合わせてまとめてみました。
踵芯の機能や種類についてはこちらを参照してください。
銀面表派の主張
- 滑らかな面が表のほうが、靴が美しく仕上がる
- 床面の方がカウンターセメントの付きが良いので、ライニングがよく接着され、結果ライニングが長持ちする。
- ラスティングの後に革を染めるクラスとレザーを使用する場合、床面が表だと染料をより多く吸収して、カウンターがある場所の色が暗くなる。銀面が表だと、染料の吸収が少なく、その問題をある程度防げる
- 革が曲がりやすく、ラストの丸みにきれいにフィットする(構造が生きている動物と同じになる)
- 革漉きがしやすい
- 銀面の方が張りがあって固いので、床面が足側の方が足当たりが良い。
床面表派の主張
- ブーツやカウボーイブーツなど、ライニングのない靴は銀面を足側にする(銀面は繊維の密度が高く、耐摩耗性に優れているため)
- 内側が滑らかな方が良い
- 床面はハンマーによってシャープなエッジを作りやすい
- 漉きが均一であれば、両面とも滑らかでアッパーを通しても滑らかな仕上がりになる
- かかと・前芯の下部を漉くとハンマーでエッジを形成するのがより簡単になる
- 整形靴では踝以上の高さの踵芯を補強したりすることがあり、その補強材を貼り削って平す場合床面の方がしっかりと接着され、加工しやすくなる。
この銀面が表が良いか床面が表が良いのか、の話は主に踵芯で意見が分かれます。
先芯に関しては、今のところ全員一致で「床面表」でした。
理由はシャープなエッジが作りやすいから。
You Tube なんかの靴作り動画を見ていると、みなさん床面を表にして、ヤスリなどで綺麗に形や下の角を整えていらっしゃいます。
(分かりやすい例があればと思ってYouTubeを探してみたんですが、ほぼ割愛されているのばかりでした。。。また見つけたら貼り付けたいと思います。)
銀面か床面、『どちら側を表に使うか』の他に、『どちら側を漉くのか・両面漉くのか』というのも話題になります。
私は3分の2を床面、残りの3分の1を銀面と習いましたが、床面のみを漉くという人がほとんどです。
漉きも、グラインダーで削るなら床面の方が断然漉きやすいですが、ナイフで漉くなら銀面の方が気持ちよく漉けます(あくまで個人的な感想です)
それぞれが違うこと言うので、ほんと興味深いです。
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